先週16日の日経夕刊の書評欄でスポーツジャーナリストの二宮清純氏が『行政不況』(宝島社新書)という本を紹介していました。私も読んでいましたが、法律の制定や改正が景気の悪化をもたらした事例を数多く取り上げています。『日経会社情報・2008春号』にも法律が業績悪化をもたらした例はいくつも見られます。中でも広範な影響力という点では、昨年6月施行の改正建築基準法が飛び抜けています。
住宅や店舗の建築の際の審査をいきなり厳格化した改正法の施行により、新築着工が急減し、建設、住宅販売、建材、住設機材、不動産など数多くの業種が厳しい状況に追い込まれました。『日経会社情報・2008年春号』の記者コメントを検索すると、実に172銘柄に「建築基準法」という言葉が載っています。新聞やテレビで報じられているように改正法の内容や運用面にまずかった部分が多々あったのでしょう。
しかし、改正建築基準法の施行さえなければ、これらの業種がずっと好調を持続できたとは到底思えません。それどころか、少し長いスパンで見れば、もっとひどい状況に陥ったかもしれません。例えば、マンション販売会社。法改正がなくて企業がそれまでと同じペースでマンションを建て続けたらどうなったか?。高値で用地を買い続けていたらどうなったか?。マンションの乱売合戦で体力を消耗したり、不動産を抱えたまま金利負担に苦しむ企業が今よりもっと増えていた可能性があります。何しろ法改正の影響で供給が減った今でさえ、値崩れしそうな雲行きなのですから。経営破綻する企業も見受けられるようになっています。
好調だった住宅着工にブレーキをかけ、08年3月期の企業業績の大きなマイナス要因になった改正建築基準法の影響は09年3月期も残ると見られていますが、ここにばかり目を向けるのは疑問です。建設、不動産会社などにとって、資材の値上がりによる採算悪化や所得の伸び悩みによる国民の購買力低下の方がより深刻な問題なのです。(編集長・Y)
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