ラストチャンス
2012年2月 9日
日経平均株価が9000円台を回復しました。終値ベースでは実に約3カ月ぶりです。各国の金融緩和に加え欧州債務問題への懸念の後退、米景気の回復期待など様々な要因が絡み合い、投資家心理が改善に向かっているとみられます。足元で発表がピークを迎えている国内企業の2011年4~12月期決算でも、通期見通しは震災や円高、タイ洪水などで厳しいものの、来期には回復を目指す企業が少なくないようです。こうしたムードを敏感に感じ取り、恐る恐る市場に戻ってきている投資家が増えているのかも知れません。
今回の決算発表で、何といっても注目を集めたのは大手電機各社の低迷ぶりです。パナソニック7800億円、シャープ2900億円、ソニー2200億円――。軒並み千億円単位の最終赤字を通期で計上する事態にまで追い込まれました。
私が大手電機セクターを担当していた4年前、各社は逆に数千億円単位の利益を上げていました。主力の薄型テレビでは、パネルなど独自の基幹部品を内部に抱え、部品から完成品まで一気通貫で取り組む垂直統合モデルが主流でした。各段階で生まれる付加価値を外に漏らさない高収益モデルと説明を受けたものです。
現在は逆に、各パーツを部品会社から調達し、完成品への仕上げまでもEMS(電子機器の受託製造サービス)に委託する水平分業モデルのほうが利益率が高い、とされています。短命化するデジタル製品の生産には、固定費負担を少なくし投資回収を早めたほうが利益が大きくなる、というわけです。
確かに、国内電機各社の外部委託の動きは遅かったですが、今回の巨額赤字の理由はそれだけではないと思われます。意思決定の遅れ、新興国での販売戦略の遅れ。それ以上に根本的な問題は「魅力ある商品が生み出せなかった」という点でしょう。米アップルの「iPhone」や「iPad」など、人々に買いたいと思わせる商品を供給できるかが、メーカーの大命題です。そうでなければ、製品=商品はコモディティー化し、ただでさえ高コストの日本メーカーは苦境に立たされてしまいます。
これだけの悪い内容にもかかわらず、パナソニックとソニーについては業績修正・決算の発表翌営業日の株価が上昇しました。相場全体が堅調なことも背景にあると思われますが、「悪材料出尽し」と評価される点は、それだけ信頼されているということでしょう。
パナソニックの通期赤字額は11年3月期の連結資本合計の26%、シャープも純資産の28%に相当します。来期もこれだけの損失は出せません。V字回復、さらに将来に向けての道筋をきちんと示せるか。まさに今期から来期がラストチャンスと思われます。(編集長・佐)

