企業行動は変わるか
2012年5月 2日
国内3月期決算会社の2012年3月期決算が相次いで発表されています。震災のあった前期が大きく落ち込んだ反動で、今期は大幅回復すると周囲も見ているだけに、各社の今期予想が気になるところです。現在のところ、やや慎重な見方が多いように感じられます。やはり欧州情勢や円高、米国経済の先行きなど、まだまだ楽観できる要素は少ない、というのが企業側の本音なのかもしれません。
そんな各社の決算会見で、目を引いたのがソフトバンクの孫正義社長の発言です。これまでソフトバンクは連結純有利子負債をゼロにするという目標を掲げてきましたが、今回の決算説明会で孫社長は「適正水準にする」と述べ、以前の方針を転換しました。過去に財務面での不安を市場から指摘され、有利子負債の削減を優先して進めた結果、2008年度末に1.9兆円あった純有利子負債(リース債務除く)が、11年度末には0.5兆円にまで減らせたとのことです。債務削減が一段落したため、今後は株主配分や成長戦略などとのバランスを取る、という趣旨で、実際、12年3月期の年間配当は40円と、前の期(5円)の8倍に引き上げています。
グローバル競争力への懸念、さらに震災などによる売り上げの落ち込みなどから、当面は設備投資や株主配分を抑え、資金の社外流出を食い止めていたのがここ数年の日本企業でした。いや、海外でもリーマン・ショック以降、積極的にリスクを取って攻めの経営に出る企業は限られていました。国内外とも、企業内部に積みあがった現預金の大きさが、その姿を物語っています。
しかし、今年はこうした企業行動が徐々に変わっていくような予感がしています。国内でもソフトバンクだけでなく、アサヒグループホールディングスが味の素から飲料大手カルピスを買収する動きが明らかになるなど、成長や株主価値の向上に向け積極的に資金を使おうという動きが見え始めました。味の素にとっても、カルピスの売却資金を自らが強い分野へ積極的に投入できる、という意味があると思われます。
UBS証券は先月、「2012~2013年の国内景気は、2004~2005年の内需回復・デフレ緩和という良好な局面と似てくる」という趣旨のリポートを発表しました。そのシナリオが実現する背景として①米国と新興国の持ち直しによる輸出環境好転②円高トレンドの停止③復興関連支出による内需回復④日本の物価上昇=デフレ緩和の期待--などと指摘しました。さらに必要な条件として「危機感による企業活動の活発化」を上げています。この危機感こそが、国内企業の背中を押し、世界の中で自らの存在を高めるきっかけになると思います。どれだけの企業がこの「危機感」を感じ、行動に移せるか。欧州債務危機や米国景気の先行きは依然として不透明ですが、今年はこうした企業の「攻めの行動」に注目し、「攻めに出られる企業の条件とは何か」を考えていきたいと思います。
このほど、パナソニック(旧松下電器産業)の川上徹也元副社長が執筆した「女房役の心得」が弊社から出版されました。川上氏は中村邦夫前社長が進めた松下大改革をCFO(最高財務責任者)として支えた人物です。高度成長の終焉、ITバブル崩壊で苦境に陥っていた巨艦・松下を、いかにして変えていったのか。その舞台裏だけでなく、創業者である松下幸之助流「キャッシュフロー経営」の真髄、さらに「良きトップを支える良き『女房役』の条件」を余すところなく語っています。是非お手に取り、ご一読頂ければ幸いです。(編集長・佐)

